― お知らせ ―

令和 4 年(2022 年) 日本補聴器工業会 年頭所感

2022.01.11

「きこえのケア」が高齢社会の重要課題

一般社団法人 日本補聴器工業会理事長 成沢良幸

皆様、新年明けましておめでとうございます。令和 4 年(2022 年)を無事に迎えることが出来、何よりのこととお喜び申し上げると共に、平素私ども補聴器業界に対して温かいご理解とご支援を頂戴している皆様方に、心よりお礼を申し上げます。
 昨年は、その前年から猛威を振るってきた新型コロナウイルス感染症に再び翻弄された年でした。まず年頭から第 2 回の緊急事態宣言が首都圏で発令され、その後11 都府県に拡大、3 月下旬に宣言解除に至りました。しかしひと月後の 4 月下旬に第 3 回の緊急事態宣言が東京及び関西圏に発令され、またも期間延長と区域拡大・変更を繰り返し、8 月下旬には全国で 21 の都道府県に拡がり、9 月末にようやく宣言解除となりました。
 この間に、予防ワクチンの 2 回接種が全国で展開され、結果的に、昨年の 12 月現在で国民の 2 回接種率は 77%以上の高い数値を示しました。一日の新規感染者数は、9 月末の宣言解除以降、減少を続け、同じく昨年 12 月現在で 160 人未満に収まっています。一方で海外では再び感染拡大が起きている中、新たな変異株のオミクロン株が発生し、これまでよりも感染力が強い様相で、世界中で猛威を振るうことが懸念されています。このためにワクチンの 3 回目接種が急がれる状況になり、今年もコロナ禍は大きな社会課題であることが明らかであります。

コロナ禍以前に予定されていた、世界保健機関(WHO)から加盟国に向けた、耳と聴覚のケアを各国の健康計画に組み込み、きこえの健康を公衆衛生のケアの優先事項にするためのガイダンス「World Report on Hearing」は、1 年遅れで昨年の 3月にようやく発行されましたが、その注目度はコロナ禍に埋もれてしまった感が否めないところです。とはいうものの我々を含めて、これを認識して来た関係の方々の積極的な活動に大きな期待を寄せるところです。関連することで、昨年 12 月に は厚生労働省から、全ての新生児が聴覚検査を受けられる体制づくりを都道府県に求める基本方針案が公表されました。さらに、厚生労働省及び文部科学省は、難聴児の早期発見・早期療育推進のための基本方針案を取りまとめています。これらは2019 年に発足した難聴対策推進議員連盟がまとめた提言書「Japan Hearing Vision」に組み込まれた課題でもあり、この提言が功を奏しているものと理解され、更なる取り組みへの期待と併せて、今後は成人・高齢者難聴に係る諸課題への積極的な取り組みについても関係の方々、とりわけ行政の方々に強く望むものです。
 昨年の当工業会の月別補聴器出荷台数は、緊急事態宣言が長く続いた状況の中、第 2 回緊急事態宣言下の 1 月~3 月で前年比マイナスとなったものの、一昨年の第1回の緊急事態宣言直後の極端な落ち込み(5月に前年比5割台に落ちた)には至らず、4 月以降 11 月まで前年比プラスを維持できました。年間を通じては前年比プラス5%程度になる見込みです。

私はこの数年の年頭所感で、我が国は、総人口は減少傾向でも、高齢者人口は 2040年までは増加し続ける状況の中、健康で長生きな「超高齢社会」は人類の理想であり、そこで大事なのは、「社会を高齢者が暮らしやすい構造に変えること」であると示させていただきました。このことは WHO の「World Report on Hearing」発行や、我が国のJapan Hearing Vision」の活動と整合するものと認識しています。 この観点で難聴の方々、あるいは高齢社会において重要な観点は何なのでしょうか。それは、耳やきこえのケアにあるという考えです。難聴が認知症の危険因子の重大な一つであることは知られつつありますが、会話コミュニケーションを健やかに維持することが健康寿命の延伸に繋がる重要なこととなります。残念なことは、高齢社会の現実の中で、「きこえのケア」の重要性への人々の意識が低いことです。この意識の低さが、現状における難聴者の補聴器使用率が低い要因の一つでもありま す。きこえが気になったら早期に耳鼻科を受診して治療を施し、それでも残る難聴に対しては補聴器等の装用可の診断を受けてきこえを改善することで、会話コミュニケーションを維持することが可能になります。
 「きこえのケア」が高齢社会の重要課題という意味は、個人に対してのみでなく、社会全体のしくみ、制度、文化等におよぶものです。会話コミュニケーションを阻害するあらゆる要素を排除したり、改善したりする行動や施策が重要です。難聴の発見、早期治療、教育、文化活動、情報発信のインフラ整備等あらゆる分野に関わります。無線入力機能が充実した補聴器にとっては、難聴者に伝える情報発信の無線インフラ整備が強く望まれます。また、補聴器購入費用の個人負担を軽減する公的補助制度の拡大も「きこえのケア」の課題に含まれるものと思っています。

最後に、当工業会が果たすべきことは、高齢社会における重要な課題の一つが「きこえのケア」であることを多くの方々に理解していただくことが大事であるとしたうえで、難聴の方々への貢献、高齢社会への貢献をより高めるために、より良い補聴器の開発とその適正な供給に努めることであります。
 そのためには関連の諸団体の皆様方との関係をより密にして、連携を深めることが重要でありますので、皆様どうぞよろしくお願い申し上げます。
 新しい年、令和 4 年(2022 年)は、依然としてウィズコロナであったとしても、コロナ治療薬の実現とその普及等で社会不安が軽減され、皆様にとって飛躍の年となることを祈念申し上げまして、年頭のご挨拶とさせていただきます。

以上