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― 難聴の知識 ―

難聴と健康

誰しも避けられない加齢による難聴は、年をとるにつれて聴覚に関係する細胞が少なくなっていくことで生じてしまいます。聴力の衰えによりコミュニケーションがしづらくなったり、テレビの音が聞こえないといった生活の不便さのほか、認知面や心理面への影響があることがわかってきました。また近年では、加齢による難聴だけでなく、それを取り巻く疾病や若者の難聴が社会問題として注目されています。

説明する医師

聴力損失に奪われてしまうこと

聴覚が衰えてくると、聞き間違いが多くなったり、相手の言っていることが正確にわからなくなりコミュニケーションに問題が生じてきます。

また「何度も聞き返していると、嫌な顔をされるのではないか」「何を言われているかわからないから不安」など、次第に心理的な面にも影響を及ぼすようになり、社会的なつながりの機会が減っていく可能性もあります。

社会的なつながりが減ってしまうと、会話などのコミュニケーションだけでなく、外出機会自体が減ってしまいます。さらに身体活動が少なくなることで筋力が低下し、転倒、骨折などの危険が増加します。その危険への不安からさらに外出を控え、社会的に孤立することでさらに認知機能が低下してしまうという悪環境に陥りやすくなってしまいます。

認知機能の低下を予防するためにも、難聴をそのままにしておかない方がよいことが分かってきています。

難聴は認知症にとって最大のリスク因子

2020年、世界的な医学雑誌Lancet(ランセット)の発表によると、「予防可能な40%の12の要因の中で、難聴は認知症の最も大きな危険因子である」という指摘がなされ、ますます難聴と認知症の関連が注目されています。

健康寿命を妨げる大きな要因、認知症

健康寿命とは、いわゆる平均寿命とは異なり、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のことを定義した新たな寿命への考え方です。日常生活が制限されるとは、自立して元気に生活することができない状態のこと。具体的には、寝たきりや認知症など介護が必要な期間を、平均寿命から差し引いた期間を指します。

ただ長生きするだけでなく生活の質を考慮すべきという認識の高まりから、近年、健康寿命に注目が集まっています。そして、日常生活が制限されてしまう大きな要因のトップが認知症です。(厚生労働省 「2019年国民生活基礎調査の概況」)

認知症を予防するためにも難聴への対処は欠かせません。

平均寿命のグラフ
ヘッドフォンをする若者

若者にも迫る難聴のリスク

スマートフォンなどの普及により、いつでも気軽に音楽を楽しめるようになりましたが、その一方でヘッドホンやイヤホンの使用によって聞こえにくくなる、いわゆるヘッドホン・イヤホン難聴が大きな社会問題となっています。WHO(世界保健機構)の発表によると、音楽プレイヤーやスマートフォンを危険な音量で使用したり、クラブやライブイベントなどで大音量にさらされていることによって、世界で11億人もの若者が難聴のリスクを背負っているとのこと。

このような騒音性難聴は回復が難しいとされているため、音量を上げすぎない、時々耳を休めるなどの予防が大切です。

難聴と耳鳴り

難聴と耳鳴り

耳鳴りとは、実際には周囲に音がないのに音が聞こえる症状のことをいいます。人によりその音の大きさはや音の表現はさまざまです。慢性の自覚的(音源が存在しない)耳鳴りにつては、その原因が完全に解明されていませんが、加齢などよる聴覚障害が耳鳴りを引き起こすと考えられており、耳鳴りに悩んでいる人は、何らかの難聴を抱えているケースが多いと言われています。耳鳴りにより睡眠障害などの日常生活への影響、憂うつ感、苛立ち、不安の増大など、感情への影響などがあると言われています。

耳鳴りに悩む人は多く、耳鼻咽喉科では専門の耳鳴り外来を開設している病院もあります。また、補聴器や補聴器機能付きサウンドジェネレーターを耳鳴り治療に使うケースもあるようです。