― お知らせ ―

令和5年(2023年) 日本補聴器工業会 年頭所感

2023.01.06

補聴器購入助成制度の広がりに技能者の組入れを

一般社団法人 日本補聴器工業会理事長 成沢良幸

皆様、新年明けましておめでとうございます。令和5年(2023年)を無事に迎えることが出来、何よりのこととお喜び申し上げると共に、平素私ども補聴器業界に対して温かいご理解とご支援を頂戴している皆様方に、心よりお礼を申し上げます。

昨年は、三年目となる新型コロナウイルスの感染者数が年明けから2月にかけて増加し、その後、春には落ち着きを見せたものの、7月に入ると急激な増加となり一日の新規感染者数が20万人を超える日々がひと月ほど続く事態になりましたが、ワクチン効果等で重症化率は以前より低くなっていることが救いでした。その後10月には数万人程度まで下がりましたが11月から増加に転じ、いつまでこのような「波」を繰り返すのか先行きは依然として不透明です。

この間に、予防ワクチンは新たな変異株に対応したものが提供され、国産の治療薬も暫定承認で投入が始まりました。海外では感染状況に地域差があるものの、マスクの着用義務もほとんどなくなり、サッカーワールドカップ等の大規模イベントも有観客で行われ、感染予防のための規制もかなり緩和されるようになりました。コロナの終息はまだまだ先になる様相ですが、今年こそは治療の進歩等でコロナを恐れる必要のない社会状況の訪れに期待したいものです。

昨年の当工業会の月別補聴器出荷台数は、それ以前のようなコロナ感染による緊急事態宣言等の行動規制には至らなかったものの、感染者数が増大した月の出荷台数が前年比マイナスとなるなど、高齢者の外出自粛による影響が推測されました。それ以外の月では前年比プラスを堅守することができ、年間を通じては前年比プラス2%程度になる見込みです。
 昨年の年頭所感では、「きこえのケアが高齢社会の重要課題」と題して、その意味は、個人に対してのみでなく、社会全体のしくみ、制度、文化等におよぶもので、難聴の発見、早期治療、教育、文化活動、情報発信のインフラ整備等あらゆる分野に関わり、補聴器購入費用の個人負担を軽減する公的助成制度の拡大も「きこえのケア」の課題に含まれるものと述べさせていただきました。
 現状、国の助成制度としては障害者総合支援法による補装具費支給制度に代表され、その対象は聴力が一定以上に重い障害者に限定されています。そして、その対象範囲をそれより軽い難聴者へ広げることは、補装具費支給制度においては困難な状況です。そんな中、近年ではより広い範囲の難聴者を対象にした補聴器購入費用助成制度が、全国各地の市町村で広がりを見せています。自治体による認知症予防の施策も絡めた高齢者対策の一環として、国の制度の恩恵を受けられない多くの加齢性難聴者を対象に含めた制度です。

このような自治体による助成制度の広がりは、「Japan Hearing Vision」で業界から求めた「補聴器購入費用の公的補助の拡大」を推進する良い流れとして歓迎しています。現状では各自治体独自の制度ですので、補助額、対象年齢、手続きのしくみ等は様々で、自治体間に格差があることは否めませんが、助成制度自体が各地に広がることが、「きこえのケア」を国内に根付かせ、より多くの難聴者のQOL向上に補聴器が貢献できる大きな意義を持つものと思いますので、多くの自治体に実施が広がることを期待するものです。そしてこれらの制度には、的確な補聴器装用を実現するために、補聴器相談医と認定補聴器技能者の介入を組入れることを強く望むものです。
 最後に、当工業会が果たすべきことは、難聴の方々への貢献、高齢社会への貢献をより高めるために、より良い補聴器の開発と、販売店での認定補聴器技能者の配置を高めて適切な補聴器装用をより広めることであります。
 そのためには関連の諸団体の皆様方との関係をより密にして、連携を深めることが重要でありますので、皆様どうぞよろしくお願い申し上げます。
 新しい年、令和5年(2023年)は、全世界にまん延する感染症、国家紛争、経済的不安定等が重なった社会不安が軽減され、皆様にとって飛躍の年となることを祈念申し上げまして、年頭のご挨拶とさせていただきます。