1. 補聴器の購入は保険適用されない
医療費や医療器具の中には、保険が適用されるものと適用されないものがあります。現在の制度では、補聴器は国民健康保険や社会保険、介護保険のいずれも対象外です。
その理由は、補聴器が治療目的ではなく、生活の質を向上させるための補助器具と見なされているからです。保険で賄えるのは、必要最小限の治療や医療器具に限られます。
たとえば、虫歯や歯周病の治療は保険適用ですが、ホワイトニングやセラミック歯など、美容目的や機能回復を超えた見た目の改善を目的とする治療は保険適用外のため自由診療となります。
眼科治療でいえば、白内障手術やメガネをつくるための視力検査は保険適用ですが、眼鏡やコンタクトレンズの購入費用は適用外です。
2. 補聴器購入の負担を軽減することは可能
補聴器は保険の対象ではありませんが、一定の基準を満たしている場合、購入時の負担を軽減することができます。具体的には下記の方法があります。
- 障害者総合支援法による国の給付を受ける
- 自治体(市区町村)独自の助成制度による給付を受ける
- 医療費控除の申請をする
ここからは、上記3つの具体的な内容について紹介します。
3. 障害者総合支援法を活用する方法
障害者総合支援法の補装具費支給制度を利用することで、補聴器購入費用が支給されます。
3.1. 障害者総合支援法とは
障害者総合支援法は、障害がある人が自立した生活を送れるように、必要な福祉サービスや支援を提供するための法律です。
正式名称は「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」です。2013年に施行され、それまでの「障害者自立支援法」に変わる形で制定されました。
同法を利用して補聴器購入費用の助成を受けるためには聴覚障害の「身体障害者手帳」が必要です。聴覚に一定以上の障害があると認められれば、身体障害者手帳が交付されます。
聴覚障害の等級は、4段階に分かれており、判定基準は下記の通りです。
3.1.1. 障害者手帳交付の判定基準
| 等級 |
判定基準 |
| 2級 |
両耳の聴覚レベルが100dB以上(両耳全ろう) |
| 3級 |
両耳の聴力レベルが90dB以上(耳に接しなければ大声語を理解できない) |
| 4級 |
両耳の聴力レベルが80dB以上(耳に接しなければ話声語を理解できない)、または両耳で普通の会話を聞いたとき、言葉を正しく聞き取れる割合が50%以下の人 |
| 6級 |
両耳の聴覚レベルが70dB以上(40cm以上離れると会話が聞き取れない人)、または片耳90dB以上かつ他耳50dB未満 |
等級別の支給基準となる補聴器のタイプは、2~3級が「重度難聴用」、4~6級が「高度難聴用」です。
助成金の利用を検討している人は、併せて確認しておきましょう。
>> 参考:補装具種目一覧|厚生労働省
3.2. 補聴器の種類別の支給金額
補聴器の値段には幅がありますが、助成金には基準額、いわば上限額が設けられています。
購入基準額は以下の通りです。
| 補聴器のタイプ |
購入基準額 |
| 高度難聴用ポケット型 |
44,000円 |
| 高度難聴用耳かけ型 |
46,400円 |
| 重度難聴用ポケット型 |
59,000円 |
| 重度難聴用耳かけ型 |
71,200円 |
| 耳あな型*(レディメイド) |
92,000円 |
| 耳あな型(オーダーメイド) |
144,900円 |
| 骨導式ポケット型 |
74,100円 |
| 骨導式眼鏡型 |
126,900円 |
※「耳穴型(レディメイド)」は高度難聴用ポケット型及び高度難聴用耳かけ型に準ずる。ただし、オーダーメイドの出力制限装置は内蔵型を含むこと。
購入基準額については、基準額以上の補聴器でも、差額購入することが可能です。ただし、自治体によって異なるため、購入を検討している人は自分の住んでいる自治体の定めを確認してください。
※世帯収入によっては購入費用の原則1割の自己負担金があります。詳しくはお住まいの自治体にお問い合わせください。
3.3. 支給金の交付手続きの流れ
身体障害者手帳を取得し、障害者総合支援法に基づいて補聴器の助成を受けて購入するまでの流れをわかりやすく説明します。
3.3.1. 自治体で必要書類を受け取る
お住まいの市区町村役所の障害福祉窓口に「障害者手帳を取りたい」と相談し、「身体障害者診断書・意見書」を受け取ります。
3.3.2. 指定医の診断を受ける
自治体が指定する身体障害者福祉法指定医の診察を受けます。聴力検査などを行い、「身体障害者診断書・意見書」を作成してもらいます。
3.3.3. 身体障害者手帳の申請
下記の書類を揃えてお住まいの市区町村役所に申請します。
- 身体障害者診断書・意見書
- 交付申請書
- 顔写真1枚
- 本人のマイナンバー
- 印鑑
- 身分証明書
3.3.4. 身体障害者手帳の交付
審査を経て、交付まで1~3ヵ月程度かかります。交付されると等級が記載されます。
3.3.5. 自治体に必要書類を取りに行く
障害福祉窓口で「医学的意見書」を受け取ります。
3.3.6. 指定医の診断を受ける
指定医に「医学的意見書」を記載してもらいます。
3.3.7. 補聴器販売店で見積書をもらう
販売店に「医学的意見書」を持参し、診断内容に合った補聴器を選びます。希望する補聴器を決めたら、販売店に見積書を作成してもらいます。
3.3.8. 補装具費支給の申請
市区町村役所の福祉窓口に、必要書類を添えて「補装具費支給申請書」を提出します。主な必要書類は下記の通りです。
- 医学的意見書
- 補聴器販売店の見積書
- 身体障害者手帳の写し
- 本人確認書類
3.3.9. 支給決定・通知
自治体が審査し、支給決定通知書が送られてきます。
3.3.10 補聴器購入
決定通知が届いたら補聴器を購入します。
3.3.11. 使用開始・調整
補聴器の装着後、必要に応じてメンテナンスを受けられます。
※自治体によって必要書類や手続きが異なる場合があるので、詳細はお住まいの障害福祉窓口にお問い合わせください。
4. 自治体独自の助成制度を活用する方法
高齢者の生活の質を高めるために、近年では補聴器の購入費用を助成する自治体独自の制度が全国的に広がりを見せています。(一部の自治体では助成制度がない場合があるため、お住まいの自治体の定めを確認しましょう。)
これは、聴力低下による社会的孤立や認知症のリスク軽減を目的としたもので、国の制度とは別に多くの自治体が取り組んでいます。条件や助成額等は自治体によって異なりますが、費用面での負担を軽減できる貴重な制度です。こうした制度を活用することも選択肢のひとつです。
4.1. 自治体による助成制度の例
- 60歳以上で非課税世帯を対象に片耳最大137,000円の補聴器購入費用を助成
- 70歳以上で聴力が低下してきた人を対象に、自己負担金2,000円で中等度難聴に対応した補聴器を1台支給
- 65歳以上で医師が補聴器の装着を必要と認め、身体障害者手帳を持たない方に25,000円の補助
5. 医療費控除を活用する方法
補聴器の購入は、医療費控除の対象になる場合があります。補聴器そのものに助成金がでるわけではありませんが、年間の医療費として確定申告することで、所得税や住民税の軽減につながります。
5.1. 医療費控除とは
医療費控除は、年間に支払った医療費が一定額を超えた場合に確定申告を通じて、その金額を課税所得から差し引くことができる制度です。課税所得が減ることで、結果として所得税や住民税が軽減されるため、医療費がかかった年ほど節税効果が大きくなります。
医療費控除の対象となるのは、本人や家計をともにする家族の医療費で、通院・治療・薬代など年間10万円を超えた分です。ただし、総所得額が200万円未満の場合は、総所得の5%を超えた分となります。控除できる上限は200万円です。
補聴器については、2018年から医療費控除の対象となることが、厚生労働省と財務省により認められました。
5.2. 医療費控除を申請する流れ
医療費控除を申請する流れは下記の通りです。
補聴器相談医の資格を持つ医療機関で受診
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補聴器が必要と証明された場合は、補聴器相談医が「補聴器適合に関する診療情報提供書」を作成
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認定補聴器専門店(または認定補聴器技能者が在席する補聴器販売店)で補聴器を購入※購入前に”診療情報提供書”を必ずもらう(購入前にもらわないと控除対象外となるため注意)
▼
確定申告の際に医療費控除として申請
6. まとめ
補聴器は健康保険の適用外ですが、障害者総合支援法により、身体障害者手帳の交付を受けた方には補装具費として助成を受けられる制度があります。
また、近年では多くの自治体が高齢者向けの補聴器購入助成制度を設けており、支援が広がっています。
さらに、医師の診断に基づいて購入した補聴器は、医療費控除の対象となるため、確定申告によって税金の負担を軽くできる可能性があります。
補聴器は、日々の暮らしや人とのつながりを豊かにする大切なパートナーです。各種制度を上手に活用しながら、自分に合った補聴器を選び、これからの毎日をもっと明るく前向きに楽しみましょう。